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H・P・ラヴクラフトの想い出 [レビュー:マンガ]

【レビュー】マンガ


久々の更新です。今回はマンガの話ではないのですが、他のカテゴリも用意してないのでこちらで。

さて、今日はアメリカ大使館の施設である東京アメリカンセンター主催の現代アメリカ講座に参加してきました。
大使館の下部組織(正確には国務省下)である東京アメリカンセンターは、日本でのアメリカ理解を促進する目的で設置された広報組織です。この組織はリファレンス・センター(調査施設)を持ち、日本国内のアメリカのリサーチャー(調べ物をする人、研究者)に様々な便宜を図っています。

さて、その活動の一旦。アメリカ理解を促す講座もすでに54回目です。私は過去二回参加していますが、さすがアメリカというか、なかなかアグレッシブな内容のものも多く、過去にはアメリカの政策自体を批判する草の根活動家の様子を紹介するなど、ひっじょーに興味深く講演を見たこともあります。

で、今回のテーマは『日米の怪談と幻想小説』

フライヤーではエドガー・アランポーやH・P・ラヴクラフトが紹介されており、マンガ好き、ホラー好きには「おお!」と思わせる内容です。

長々と書いてもしょうがないので、さくっと。通訳音声を使わずに英語で聞いたけど、まちがってたら、ごめん(笑)。

講座を担当したのは大使館の情報資料担当官マイケル・ハフ氏。

まず彼は、SF、ファンタジー、ミステリなどの用語を簡単に説明しつつ、その中で、ホラーを一つの大衆文化に位置づけます。ホラーの魅力(定義)は、不可知さ、不可解さに触れる面白さにあり、過去性にも影響されるものであり、そして美しい女性を際立たせる描写に富んでいるところにある・・・という、ひっじょーにわかりやすい説明。

パワーポイント(プレゼンテーション用PCソフト)を使いながらの簡潔な説明は、オーディエンスの関心を引きつけるのに十分。各作家の顔写真も紹介されていましたが、いつもラヴクラフトの顔を見て思うのは、映画『帝都物語』で加藤役をやった嶋田久作そっくりだなーということです。嶋田本人もラヴクラフトが好きなそうで。

そういえば、嶋田久作がその名前を取った夢野九作にも似ているそうな。
で、その夢野九作も今回紹介されておりました。

アメリカの作家として、ポー(余談ですが、エドガー・アラン・ポーのハフ氏の発音が、『ドラゴンボール』に聞こえてなりませんでした。なんてこったい!)ラヴクラフト、ラフカディオ・ハーンで、ホラーの「場所」が、民間伝承との関係の中で形作られ、大衆文化となっていく系譜にある・・・というニュアンスの話をされていました。きっちりとした感じではありませんでしたが。

日本側からは、小泉八雲が被りますが、それ以外には、江戸川乱歩、泉鏡花、夢野九作、栗本薫(!)でした。じつは、泉の「高野聖」も夢野の「ドグラマグラ」も翻訳され、アメリカで読まれているとのこと。そして、最近では栗本薫も翻訳され、ヤングアダルトに人気があるのだとか。

そう、大衆文化としてのホラーは、日本はアメリカの影響を受けつつ、ラヴクラフトの言説を利用したりしながら、融合し、またそれが栗本薫の作品のような形で、アメリカに輸出されている・・・というわけです。

アメリカの図書館の統計では、ここ最近の若者の貸し出しでは、ヴァンパイアものがイチバンの人気であり、ヤングアダルトの中では、ホラーが安定した人気があることが紹介されていました。

こうしたなかで、米図書館では、本を貸し出すだけではなく、ライブラリアン(図書館員)が学校などに出向いたり、図書館で企画を立てたりして、朗読会を開いているそうな。これは日本では中々ないことですね(大学院の後輩がドイツの絵本などを翻訳して読んだりしている、ということを言っていましたので、まったくないわけでもないのですが、大規模図書館に限られる気もします)

そういえば、14年くらい前にハワイに語学留学したときに、ホームステイした家族のママさんが、毎週太鼓の勉強会と、バーンズ&ノーブル(アメリカの有名な書店グループ)で開催される朗読会に行っていました。アメリカでは朗読会は、日本よりも馴染まれているみたい。日曜礼拝の習慣があるお国柄ですから、聖書の勉強会をはじめとした朗読会はふんだんにあるようですネ。

ライブラリアンは、学校などに出向いて、子供たちに朗読します。その中には時には、民間伝承やホラーも含まれるわけです。ホラーは身近なお楽しみの物語なのです。

最後に、ハフ氏自らが、英語の翻訳で、『怪談』の一つの物語「雪女」を朗読して下さいました。「雪女」自体は日本人にとって馴染みのある物語ですが、ハフ氏の語りは、抑揚が聞いていて、楽しく聞けました。やっぱり、ライブで語りを聞くというのはいいものです。筒井康隆が朗読に一時期熱心だったこと(口述スタイルのテープ出版などありましたね)がよく分かるほど、楽しいものでした。


終了後のフロアからの質問では、クリスタニティ(キリスト教性)とのホラーの関係などの示唆などが飛んでいて結構刺激を受けました。個人的にはフランスの幻想小説がアメリカの幻想小説ほど日本で広範囲に認知されなかったのは何故なんだろう、ゴシック・ホラーの面白さとはどこにあるのだろう、ということを聞きたかったのですが、あえなく時間切れでした。


────
さて、ここから、普段語り(笑)。

やっぱ、子供の頃に本を読む糞ガキってのは、ホラーのエロが好きなんです。訂正。エロスが好きなんです(笑)。そして、ホラーの中の不可知性や、不条理に触れることで、思考の幅を広げて言っている、という気がしてなりません。

で、今でもよく思い出すんですが、中学生のガキの頃、バスで2時間半も離れたところに住んでいる大学生のおにーさんのところに遊びにいっていまいした。今考えるとすげー図々しいのですが。

彼はホラー映画大好きで、ガキの俺に「死霊のはらわた」を見せようとするとんでもない人でした(笑)。当時はTTRPG(サイコロで遊ぶロールプレイングゲーム)が流行っていた時期で、そのおにーさんの主導で、いろいろ遊ばせてもらいました。

その中で、ホラーのゲームで、ラヴクラフトの作品を原作とする「クトゥルフの叫び声」を何度かプレイしました。

ゲームですが、大抵プレイヤーが発狂して終わります
なんてこったい!

子供の頃の私は、その「美学」が上手く理解できませんでした。

えー、不条理だああああああああ!

そう思ってました(笑)。今だとその楽しさがわかりますが、その不条理が理解できずに悩んでいる俺をみて、実はそのおにーさんは楽しんでいたのではないかと思います。それが『風のクロノア』のゲームデザイナーで著名なあらゐよしひこさんでした。酷い人です(笑)。

────
子供の頃によんだラヴクラフトは、修飾語の魔力でした。そして、不可解な名詞の連続に、少年の俺は酩酊したりもしたものです。さすがに、這いうねったりはしませんでしたが。

ハフ氏は、解説の最中に、ラヴクラフトの人種(差別)主義者の側面を提示しました。

これは意外な気がしました。そういう描写の記憶がないんですね。10-15歳ころに基本的な物は読み、浪人生の頃に派生作品や他の短編なども読んでいましたから、物心ついているときに触れていたはずで、でも人種差別的な描写の記憶はありません。

これは、単に物語のそそる部分が不可知さにばかり向かい、その他の描写を見落としていたのか、それとも子供の頃の私が知らずのうちに人種差別的な物語を受け入れていたのかもしれません。

ラヴクラフトが執筆していた当時は、優生学や人種主義観に基づいた社会進化論が一通り流布しており、また暗黒大陸アフリカや南米の未開の部族が(コンラッドを引き出すまでもなく)、世界の不思議として、そして米国内の人種差別とも結びつきながら、不可知なものとして認知されていた時代です。もちろん、黄色人種とて、怪しげな存在として今よりもずっとずっと強く認知されていた時代でした。

この点について、ちょっと再読したいなー、という気にもなりました。
クリスタニティと人種主義の観点を頭の隅において読んだら、どう感じるでしょうね。

────
で、また話は飛ぶのですが、マンガ家の藤子不二雄Aさんが作品の小道具につかったり、佐野史郎が主演でドラマ化したり、荒俣や栗本薫にも影響を与えたラヴクラフトではありますが(マンガ家の矢野健太郎さんは、ずばりその系譜の作品を書いたりもしています)、日本での研究は進んでいない気がします。

僅かにユリイカのなかで幾つかの記事がありますが、研究論文となるとさらに数本。しかも、それらの多くは、英文学者の金井公平さんによって書かれたものです(私も一つしかまだ読んでいません)。最近になって社会学の領域でも書かれたようですが、その程度です。

これはなんでなんだろう・・・。あ、古きものどもが、裏から手を回して・・・・・・・。


────
ってなことで、俺のラヴクラフトの想い出は、

へんなおにーさんの不適な笑み、だったりします。

作品で好きなのは、インスマスと思いきや、「宇宙からの色」と、「狂気の山脈にて」の二作品でした。鼠の話も何となく記憶にあるんだけど、あれは本人ではなかったっけかなぁ。さすがに覚えていません。というか、よく俺は二〇年前に読んだ小説のタイトル覚えてるなあ・・・といまちょっと吃驚しました。


講座の感想としては、
高野聖、ヴァンパイア、雪女・・・そうエロですね。もうエロエロしていて良いんじゃないでしょうか。 もっと子供が読むべきです! あと、不条理を感じて、悶々とするといいですね。はい。

もっとセンシティブな、惑いの物語を子供も大人も触れていける。そういう文芸に浸れる社会であるといいですね。そんなことを思いました。


てなことで、とりとめもなく。

まるっ!
  
 
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ろっぽんそー

色々な作家さんを知っていて驚きです。
恥ずかしい話、江戸川乱歩と藤子不二雄しか知る名前がありませんでした。
アメリカの図書員さんは積極的ですね、地元の図書館も昔はバスで「移動図書館」をやってましたが、今は廃止されてしまいました。
子供の時は確かに固定概念が無い分、自分の世界や思考が敏感に広かった気がします。
藤子不二雄先生の「わが分裂の花咲ける時 」ってタイトルの漫画がホラーと言うかカルト感満載なのですが、カルト過ぎの為か単行本には未収録です。
ニコニコ動画で見れるのですが、ゾッとしました、なんとなくつげ義春先生に通じる感もチラホラ。
by ろっぽんそー (2010-04-04 21:39) 

powerful

あ、ろっぽんそーさん、どもです。

周りに本読みが多い環境だったので、なぜか幅広くは知ってます。読んでるかどうかはまた別の問題(笑)。

「わが分裂の花咲ける時」をみてきました。藤子不二雄Aさん(我孫子さん)の作品ですね。ちょっと調べてみたら、『COM』誌に1971年に掲載された作品でした。

コムは67年創刊で、手塚治虫が『ガロ』とは別の路線を意識していた・・・とよく言われますが、件の作品がつげ義春に通じるものがあるというのはその通りで、実はガロへの対抗意識よりも、お互いに影響し合っている部分がでてもいたのかな、とも読み取れそう。ちょっと勉強になりました。

ちなみに、この年にコムに掲載された我孫子さんの漫画は、タイトルから察するに同系列の漫画ばかりだったのではないでしょうか。おそらく、1年掛けて、手法的な実験あるいは新たな試みを定着させようとしていたのかもしれませんね。
by powerful (2010-04-09 14:08) 

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